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生活保護で自分の人権に気付いた

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生活保護で自分の人権に気付いた

あ、私も生活保護受けていいんだ。
借金、風俗してまで返さなくていいんだ。
気付くまで長い道のりだった。

毎日お腹痛くなりながら出勤して、ドブ臭い口に笑顔でキスして歯周病もらって、客には「普通にご飯行こうよ」と言われて、閑散期にはお茶挽いて、スタッフには写メ日記の更新煽られて、一生懸命過激な写真撮ってはインターネットの海に乳首を放流。性を切り売りする度に尊厳は削られる。

風俗業界は歩合給。日給は8万のときもあれば0円の時もある。毎月の性病検査に1万円ちょっと。下着も買わなきゃ。客ウケのいいクソダサい花柄のAラインワンピースも買って。あーお茶挽くならカラコン着けなきゃよかった、1dayなのにもったいない。昨日お茶挽いたから今日こそは今日こそは。脇毛剃らなきゃシャンプーしなきゃ。ドライヤーが異様に重たく感じて、わけもなく涙が出る。死にたい死にたい。

なんでこんな仕事必死にしてるの?
普通に働けないから。

何度も昼のバイトをしようとしたし、何度か挑戦したけど、予定も守れなくて続かない。
心療内科の先生は「無理しないで」と簡単に言うけど、でも働かなきゃ生きていけないのに。普通の人、どうやって生きてるの?

「もしもし、すみません。今日体調悪くて休みたいんですけど」
「19時から本指予約入ってたんだけど難しいかな?」
「……じゃあ予約だけ、」

行かなきゃ行かなきゃ。行けば1万5千円は確定してる。脱いでキスして色々やって1万5千円。その後も予約が続けばそれ以上。それ以上できるかな。事務所まであともう少し。冷や汗と涙が出た。死にたい、死にたい、死にたい。

【五反田まで着いたんですが貧血がひどくてお休みでお願いします。お客様にご迷惑おかけしてしまって申し訳ありません】

送ったLINEの既読がつくのさえ怖くて、すぐにスマホを切った。あとちょっと頑張れば、1万5千円は貰えたのに。あとちょっとができない怠け者。

週4で出勤入れても半分くらいはこんなふうに当欠したり遅刻したり。スタッフが呆れているのも感じていた。そんなだから結局普通のOLより貧乏だった。生活費は足りなかった。赤字の生活費はカードローンで補填する。取り返さなきゃ。せめて嬢として売れるためにいい下着を分割払いで買った。

そんな2020年初頭である。

パターン青、コロナ襲来。緊急事態宣言。客、沈黙。分割払いをリボ払いに変更。

お客さん少なくて暇なんだからもっともっと出勤しなきゃ出勤しなきゃ出勤しなきゃ、そんな時に予防会クリニックから性病検査の結果、クラミジア陽性。
働きたくないけど働かなきゃいけなくて、でも働いちゃいけなくなって、薬代もかかって。

生活は破綻していた。
督促の電話が怖くてたまらなかった。

債務整理の知識も生活保護の知識もなにもなかった。もう一切働けない人が、身ぐるみ剥がされて家の中全部調べられて、根こそぎ持ってかれるんだと思ってた。そうじゃなきゃ身体売っても漁船乗っても払わなきゃいけないんだと思ってた。

コロナ禍で風俗嬢はみんなしんどい思いをしていたから、twitterには似たような境遇の子がたくさんいた。そのうちの1人が、自己破産して生活保護を受ける、風俗は足を洗うと呟いた。
……そんな手が?

ひろゆきのツイートに背中を押されるとは。風俗関係者向けに生活相談を行っている支援団体があった。そこで弁護士に話を聞くと、私は破産をして、生活保護を受ける権利があるらしかった。

私、もう休んでいいの?

支援団体にアドバイスを受けながら、惰性で通っていた心療内科に診断書を申し出て、役所を回って、生活支援課に障害課に、もうそれはそれは必死に手続きをした。弁護士とも打ち合わせて自己破産をした。それはそれでしんどかったけど、稼げるかもわからない風俗に出勤する日々よりも希望が持てた。
2週間後、茶封筒に入った生活費を役所から受け取った。すぐに市役所の食堂に入って、働かざる者なのにごはんを食べた。おいしかった。

だんだんと伸びていく脇毛を見ると、私は風俗を辞めたんだと実感する。

数ヶ月して障害者手帳が手元にやってきた時、私はなにかゆるされたような気持ちでいっぱいになった。免罪符がほしくてたまらなかったのだ。脱がなくても、働かなくても、ごはん食べていいんだ。

今は最低生活費を国からもらって、穏やかに人間らしい暮らしをしている。
あの谷底のよどんだ繁華街に泣きながら行くこともない。

日本国憲法 第二十五条
すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

 

そうだ。私にも人権あったんだ。

 

 


 

2021.8.19 毎日新聞の取材をお受けしました。

当ブログはは適宜情報のアップデートを行っています。記事の内容について詳しく知りたいことや、間違い、古くなってしまった情報があれば遠慮なくコメント欄やメールフォームからご指摘ください。
当ブログは適宜情報のアップデートを行っています。記事の内容について詳しく知りたいことや、間違い、古くなってしまった情報があれば遠慮なくコメント欄やメールフォームからご指摘ください。

コメント

  1. より:

    私は元教員です。職業は違えど全く同じような精神状態に陥り、辞めてしばらくは「働かなきゃ働かなきゃ!」と焦りまくり余計に自分を追い詰め自殺未遂で死にかけました。でも精神科に心優しいケースワーカーさんがいて、障害年金というものがあり、申請したらと教えられて、2級が通って落ち着きました。何もできなくても、生きていいんだと教えられて救われました。働けなければ人として認められない、では人権て何でしょうか?そんな気がします。このブログは本当に辛い経験を語っていて大変だと思いますが、素晴らしい学びを日本人にもたらしていると思います。できる範囲で書き続けてくださいね。陰ながら応援いたしております。

    • もも より:

      東大教授の件で心配してます。大丈夫ですか。

      私は女性としか交際経験がありませんが、最近よく異性愛交際をする女性について考えてました。おそらくあらゆるセクシュアリティのなかで一番、交際相手から暴力を受け、そして殺害されてるのは異性愛女性だよなーって。

      女性の身体的な痛みってあまりにも社会的に構築されてないように思います。
      AVって表象だけの問題ではなく、身体的な痛みが必ずあると思います。性行為以前に、「裸でいること」、それ自体が身体に痛みを与える。転んだら何にも守られないし、風が吹いたらもろ晒される。女性はあまりにも痛みに慣れさせられてると思います。

      たとえ同じ女性であっても、「ある痛みを経験した一人の女性の身体は、もしかしたら自分の身体だったかもしれない」という想像ができない人が居ること、その人の発言によって生身の身体の痛みが「イデオロギー」に回収されてしまうこと。とても悲しいです。
      痛められた身体は責められるべきではなく、治療・休養されるべきです。
      どうか休んでください。

  2. なまほ より:

    生活保護と言うと怠け者が税金を搾取するための手段だと見る人もいますが、本来の趣旨は基本的人権を守るセフティネットです。このような、形で情報発信をいただくのは、困っている人への助けになると思うので引き続きがんばってください。

  3. いっせい より:

    20代おとこです。
    私もデリヘルの内勤で働いていました。そんな最中、200万ほど同僚に貸したっきり帰って来ませんでした。上司に相談したところ最初は協力してくれるといっていたが私のせいにして、罰金をふっかけてきてパニックになってしまって無理やり退職を余儀なくされました。社長も風紀をして結婚をし、部下から罰金を巻き上げて遊びに行く人間的に魅力のない人間です。上司同僚、みんな私のせいショックで鬱気味になっていました。
    現在、投稿主さまを見て私も生活保護、来週初めての精神科、精神科を通いつつ600万くらいある負債も自己破産の手続きをしようと思います。頑張って再起したいです。稚拙な文章で申し訳ないです。いつも応援してます。

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この記事を書いた人
断崖みさき(なまぽちゃん)

どんどん受けよう生活保護。社不すぎて定職つけず風俗転々虫の貧困女子→諦めて自己破産して生活保護へ。現在は穏やかに暮らすことができています。精神障害者手帳2級所持。 #風俗はセーフティネットではありません

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