私が風俗嬢だったことを知る友人はほとんど居ない。
時々、妙な焦燥感に駆られて風俗求人を見ることがある。またあの地獄に自らを放り込みそうなことが怖い。あの頃の仕事道具は全て捨てた。髪の毛も一度は刈り上げてみた。
今は平然を装って、性売買と無縁の、『一般的な人』のように振る舞っている。
世間から『売る女』は特別視される一方で、『買う男』はあまりにも日常的だ。チャイエスでどこまでできたとか、『チェンジ!』がジョークで飛び交う、そんな話で男どうしの友情を深めているやつらが大して咎められることはない。
(吉野家の炎上も、そんなオールドボーイズクラブの延長線上に起きたことだろうと思う。)
私は元性売買当事者であることを隠して日常を生きている。息をひそめて埋没している。つもりだ。
そんな中で、性暴力に関する話題が報道やSNS上で増えてきていて、私を『普通の女』だと思って被害を打ち明けてくれる女性も、いる。
「うちはそういう店じゃないのに」
そんな言葉を聞くたびに、私は内心で、「そういう」女だった、私は、と胸に小骨がささったような気持ちになる。
「セクハラするな、そういうことはそういう店でやれ」
わし(「そういう店の女」の人権侵害についても思いを寄せてくれんかなあ)— 断崖みさき🌊性風俗サバイバー (@DangaiMisaki) April 20, 2022
- 『昼の仕事』の場で容姿いじりやシモネタを話したがる男に「そういう話はキャバクラでやれ」
- キャバクラで触ろうとする男に「そういうことは風俗でやれ」
- 強制わいせつや強制性交する男にも「そういうことは風俗でやれ」
- デリヘルで本番しようとする男に「そういうことはソープでやれ」
- ソープで避妊具を外そうとする男に「そういうことはNSソープでやれ」
- NSソープで排泄物を食べさせようとする男に「そういうことはSM店でやれ」
↑これ、どこから人権侵害してると思いますか。
ねえ、あなたがそういうことをされない権利があるように、誰一人、『そういうことをしていい女』は存在しないんだよ。『人権侵害用の女』は存在しない。でも、いることに、させられている。
未成年は守らなきゃ? 成人なら被害じゃない? 17歳11ヶ月と18歳0ヶ月の違いはなんですか?
判断能力があるなら? 自由意志のもとに? 判断能力って、自由意志ってなんですか?
どうしてどこかで線を引いて、『暴力用の女』を確保しようとするんですか?
性売買と性暴力に線引きをしたいのは、誰ですか?